子供の連れ去り(実子誘拐)とは?
「連れ去り」とは片方の親が配偶者の同意なく、子供を無断で連れ去り別居する行動を指す。実質上は子の誘拐(実子誘拐)である。またはその行動が引き起こす様々なネガティブな事象全体を社会問題として指す場合もある。関連する法律が十分に整備されていないため、一度連れ去られると最悪の場合、子供と生き別れになるリスクがある。
離婚率が35%に達しており7割に夫婦に子供がいる。現代の日本においては「他人事」ではなく、子供がいれば「貴方にも十分に起こる問題」なのである。これは現代日本における世間の認知度が低い問題の中でも、最悪で最も深刻なものである。
最初にこの話を聞いた人間は、まさかそんなことが法治主義国家である日本にあるはずなどないと一様に驚くだろう。しかし、これは本当の話である。
目次
連れ去り勝ちとは? – 「先に連れ去った親が勝ち」とする闇のルール
2020年現在において、日本国は「単独親権制度」を採用している。これは離婚後は片方の親が親権を保持し、もう片方の親が親権を失うシステムである。
(ちなみに世界の先進国の多くは単独親権の弊害の多さから1980年以降、単独親権制度から「共同親権制度」に切り替えており、単独親権制度を採用する我が国は先進国の中では日本のみである。*法務省調査より)
問題は以下である。世間は離婚裁判において親権者としてふさわしい親を公正な裁判で選ぶと考えている。しかしながら、実情は裁判所は先に子供を連れ去った親を親権者として指定していることが様々な調査やアンケートから明らかになっている。これを「連れ去り勝ち」と言う。家庭裁判所はこれを公式には認めていないが、「継続性の原則」や「現状追認の原則」と言う場合もある。個別判断をしていると裁判所は言うが、実際には画一的な判断である。
ちなみに世間は親権を獲得するにあたり母親が有利と考えている風潮があるがこれは正しくない。裁判所はジェンダー(性別)にかかわらず、先に連れ去った者に親権を与えている。したがって、女性(母親)の連れ去りの被害者も多く存在している。
また、連れさられた子供は、その後、精神的にも甚大なダメージを被むることが国内外の各種研究から判明している。経済的にも片親から育てられることから一般的には厳しい環境に追いやられる場合が多い。
国際社会からの相次ぐ非難。しかし日本は変化を拒んでいる
あまり知られていないが、日本の子供の連れ去りは子供の人権侵害として国際社会から問題視、非難され続けている。EU本会議での非難決議(2020)、国際連盟からの共同親権の立法勧告(2019)、子供の権利条約の批准違反、米国からのハーグ条約違反の常習国指定(2018)が現在までにもなされてきた。しかし日本国政府(主に法務省、外務省、厚生労働省)や最高裁判所は正面からこの問題の根本解決に取り組もうとはせず、国際社会からの非難を避けるべくその場限りの個別対応、対処療法的に誤魔化してきた節が垣間みられる。
一度連れ去られると、子供と生き別れになる可能性も十分にある
信じられないかも知れないが、戦前であればまだしも現代の民主主義、法治主義とされている日本において子供と引き離されてしまうリスクは十分に起こる。また、筆者も実際に子供と断絶されたい親を男親、女親にかかわらず多く見てきた。北朝鮮ならまだしも、何故、このようなことが日本で起こるのだろうか?
子供と生き別れになる理由 – 「法律の空白」
結論から述べると、連れ去りや離婚、親権を含め、実は意外なことに諸外国と比較し日本では法整備が十分になされていない。また、行政は縦割りになっており横の連携が基本的にはない。ルールが存在しないので裁判所や警察、役所は「法律」ではなく「運用」で対処してきた。しかしその運用が結果的には先に連れ去った方の親に多大な権限を与えるものとなっており、非常に大きな弊害が生まれているが、立法はなされずに放置されている。これが子供と生き別れになっている原因となっている。
さて詳細だが、前述したように片方の親が子供を連れ去った場合、それが実の親であっても諸外国では誘拐罪にあたる。しかし、日本では最初に連れ去った段階では原則的には誘拐罪とはされない。すなわちそこでは警察は動かない。刑法224条における未成年者誘拐罪は実の親であっても構成要件を満たし適用されると法務省も認めているにもかかわらず、警察は動かないのである。(理由は後述)
この時点では当然に両親に親権が存在する。また、親権のサブ的な権利として「監護権」という子供の面倒をみる権利も当然に両親は有している。しかし、ここで連れ去られた子供を取り戻そうとすると、なぜか警察が動く。すなわち警察は「連れ去り」は認めているが「連れ戻し」にはアクションする。これは恣意的に法が運用されており、法の支配を脅かす非常に由々しき自体であるのだが、「連れ去り勝ち」とされている理由のひとつでもある。ちなみに先に父親(男性)が連れ去っても警察は動かず、母親(女性)が連れ戻そうとすると警察は動くので、これはジェンダー(性別)の問題でないことはここでも見て取れる。
次に法的な手続きで持って子供を取り返そうとする。それが「監護者指定・子の引き渡しの請求」と呼ばれる手続きである。しかしここでも裁判所は余程のことがない限り、先に連れ去った方を勝たせることが各種調査やアンケートで判明している。10年間、子供の世話をしてきた母親でも、連れ去られれば取り返せないのである。
更に裁判所には「面会交流調停・審判」という手続きが用意されている。しかし裁判所が下す判断は型が決まっており「1ヶ月につき2時間」である。今まで毎日、子供と遊んだり添い寝しているのが当然であった実の親が、急に子供との絆の時間を奪われるのである。
更に悪いことには、連れ去った親が仮にこの裁判所の命令を無視したとしよう。確かに制度として罰金の支払いを命じる「間接強制」と呼ばれるものは存在する。数万円程度の罰金である。しかし連れ去った親の実家が金持ちで、数万円程度であれば痛くも痒くもなく支払うというのであれば結果はどうなるであろうか?
ここに悪魔的な親子を引き離すスキームが完成するのである。たとえ子供がどんなに生き別れになったお父さん(もしくはお母さん)に会いたいと望んでも、子供は連れ去った親の支配下にあり、自我が芽生え体が大きくなる中学生までは、連れ去った親には抵抗できない。仮にできたとしても、それまでに生き別れた親の悪口を連れ去った親から聞かされ洗脳されることも事例としては多く存在している。(これを片親疎外という。)
そして子供が成人し本当は何が起こったのかを理解した時は、生き別れになった親のみならず、自分を親から引き裂き連れ去った親も同様に恨み、その後、子供は残りの人生で心に傷を抱えながら生きてゆくことになる。ここに壮絶な悲劇が完結するのである。
最新の政治動向
2021年3月に上川陽子法務大臣の諮問を受けて、共同親権の導入を本格的に議論すべく法制審議会が開始された。内閣は法制審議会の答申(報告)を受けて国会に法案を提出する流れとなる。ただし法制審議会には共同親権推進派、反対派の双方がいて道筋は容易でなはい。それでも世の中の大きな流れとしては共同親権導入に向かっている。
われわれ当事者ができることは、この流れをサポートすべく自分ができる範囲で最大限できることを行ってゆくことである。